V6のユニゾンを考える
V6のユニゾンが、好きだ。
アイドルグループを好きになる時。人によって、何をもって「推せる」と感じるかは様々だと思います。ビジュアル、人間性、グループの雰囲気・仲の良さ、音楽性、その他諸々…。私もV6を推していますが、その理由を「全てが尊いんだよ!!」と逆ギレせずにあえて明瞭化するとすれば、大きく二つ。
一つは、見ていて「楽しそうだなこの人たち」と思えるという点。見ている人を「楽しませよう」でなく、自分たちが「楽しもう」を唯一のルールとするグループのスタンスがそうさせているのでしょう。その様子が結果的に私たちを楽しませてくれる。これってとても幸せな関係なのでは、と思います。
そしてもう一つは、パフォーマンスの質の高さ。彼らの音楽性、ダンスと歌唱。これが最高にツボなわけです。パフォーマンスに真摯に向き合う職人気質をメンバー全員が持ち合わせているという素晴らしさ。全人類V6のライブを見てくれ、と切実に思います。
さて。そんな個人的V6推せるポイントの一つ、「パフォーマンス」の中から、今回は彼らの歌、その中でもさらにピンポイントな「6人でのユニゾン」について少し考えてみようと思います。
◎V6のユニゾン
本当に思うのは、V6のユニゾンによる表現の幅広さ。これはあくまでCD音源の話ですけど、誰の声を中心に据え置いてユニゾンをミックスするかで、「V6の声」の印象が変わるから本当に面白い。ディレクションする側は絶対楽しいと思う。
— かんきつ類 (@6_knktfruits) 2018年10月7日
グループアーティストならではの武器、ユニゾン。複数の人間で同じフレーズを歌って重ねたユニゾンの響きは、それを構成している声ひとつひとつで大きく変化するものだと思います。だからグループによって違う響きになるし、それぞれに「ならではの色」があって楽しい。
私はV6の、それぞれがバラバラな声質なのにぴたりとハマるユニゾンがめちゃくちゃ好きなのですが、CD音源を聴いていると、曲ごとにユニゾンの聴こえ方が結構変わるなと感じます。それはきっと、レコーディングしたそれぞれの声を合わせて各人の声のボリュームを調整してバランスを取ったり、音の位置を真ん中・右・左に振り分けたりする作業のさじ加減で変わるもので、そこにはおそらく作り手の「この曲はこういう風に聴かせたいから、この人の声を中心としたユニゾンにしよう」などという意図があるのだろう、と私は想像します。
(もちろんチームV6が曲を作り上げるまでの正式な手順や作業を知っているわけではなく、通説的にそうなのではないかという、にわか知識のもとでの推測です)
そんな推測をもとに彼らの楽曲を聴いていると、各メンバーの声の聴こえ方のバランス次第で、ユニゾンから受ける印象が変わるように感じ、興味深かったので、考えをまとめる意味でここに思ったことを記そうと思います。かなり細かく、マニアックなものになると思いますので、「そんなこと考えずに曲を楽しみたい」という方はご注意を。
まず、前提として押さえておいていただきたいのが、
- あくまで個人的感想であり、例えば実際に音を波形や数値、各メンバーのボリュームの振れ方などの確かなデータで学術的に分析したわけではなく(本当はしたいけれども現時点で手段がない)、完全に耳で聴いて感じたことを書いている。書き手は音のプロと言えるほどの人間ではないため、にわか知識+フィーリングで耳に信憑性はない。
- 全員の声がしっかり聴こえている中でのバランスの話をしている。「この曲はこの人の声しか聴こえない」ということを言いたいのではでなく、あくまで「この人の声が前の方に来ている(=よく聴こえる)と、こういうユニゾンになるのか!」という、それだけの話で、何かを批判する意図は全くもってない。
- 音量を上げてイヤホンでガッツリ聴いた分析。耳元ではなく、離れたところからふわっと聴くとまた聴こえ方は変わると思う。むしろ世間の「V6の声イメージ」はだいたい遠くからふわっと聴いたもの。あとはスピーカーやイヤホンによって聴こえ方が多少変わるのでその違いにも留意して欲しい。
ということ。以上の点をご理解頂いた上でこの考察を見ていただければと思います。以下一部敬称略。また、コンビ名などは公式な呼び方やメジャーな呼び方ではないものもあるかもしれませんのでご注意を。
◎V6の声の内訳
V6のメンバーは六人。声の高さで分けるとすると、比較的ロー成分多めな坂本・井ノ原・岡田、ハイ成分多めな長野・森田・三宅っていう分け方がおそらく一般的なのだと思います。本人達も『V6 live tour 2011 Sexy.Honey.Bunny!』のMCにて「坂本・井ノ原・岡田はよく声が似ていると言われる」と言っているので、おそらく彼ら自身もその認識を持っています。
※蛇足⑴ ちなみに、「でも俺高いキーになると長野くんに似てるって言われる(岡田)」「ディレクターさんに言われたの(長野)」という重要証言の後、井ノ原くんの「出世魚みたいだなお前」というツッコミでこの下りは終わってます。V6の面白いところは、声の似ている組み合わせがキーによって変動するという点。坂長コンビ(坂本・長野)も、歌い方やキーによって声が似ていると感じることがよくあります。
※蛇足⑵ このロー成分組・ハイ成分組という分け方にした場合のわかりやすい歌声の違いは、『GOLD』という楽曲をお聴きいただければなんとなくわかるのではないかと思います。あくまで私の耳で聴いた感じだけで言ってますが、サビが所々この組み分けによるユニゾンになっていて、頭から聴いていって最初に来る「君は遥か遠く 浮かぶ月のようだ」が(ちょっと岡田くんがいるように聴こえなくもないけれど)おそらくハイ成分組。さらに進んでラストサビの「君は金色に…」から「…来るがいいさ」までは坂本・井ノ原・岡田の3人のユニゾン。その次のフレーズ「君は遥か遠く」からが長野・森田・三宅が加わった6人でのユニゾンです。特に、ラストサビのハイ成分組が加わる前と加わった後を聴き比べてみてください。低音で、ものすごく融和した3人の声(声の相性の良さがすごい)から、高域の3人が加わることで音域に広がりが出て、厚みが増したように感じるのではないでしょうか。
このほかに、エッジの強さで分けてみると剛健(森田・三宅)と他4人という分け方にもできると思います。他4人の中でも長岡(長野・岡田)はユニゾンになったときに芯を見失いやすいのですが、言葉の端々とか余韻に2人の声のエッセンスが聞こえるという、ふんわり漂うエアリーなイメージ。エッジが強い順に並べると、三宅>森田(ウィスパー気味だとそこまで強くないが高音など部分部分で強くなる)>坂本=井ノ原>岡田=長野という感じ?
この声の内訳を踏まえた上で、V6の楽曲で見られるユニゾンのバランスから、4パターンをピックアップして考えてみました。
◎坂イノが前にいる
例えば『Crazy Rays』は坂イノが前めにいてキーの変化で長岡が感じられ (「don't stop」とか「どうか」とか、特に語尾にエッセンスが出ている )、剛健は後方にいつつもスパイス的に全体に作用してるというイメージ。「この胸の奥を 締め付けるCrazy Rays」っていう部分で比較的高めのキーを取るのに、高音で特にエッジが効く剛健が前に来ず坂イノがよく聴こえるっていう点からこういう聴こえ方のバランスではないかと。これだとロー成分多めの落ち着いたユニゾンになって、この曲の大人っぽい印象にハマっています。
坂本くんと井ノ原くんは、数ある楽曲の中でもそうそう後ろで聴こえることはないイメージです。V6の声のバランスって本当によくできているなと思うのですが、低音域・中音域・高音域にうまくばらけたメンバーによるユニゾンなので、同じ音程を歌っていてもオクターブで歌っているように錯覚したり、ハモっているように聴こえたりと、厚みや奥行きのあるユニゾンに聴こえますよね。坂イノがよく聴こえるタイプのユニゾンに限らず、どの楽曲でもこの二人が芯のある低音でしっかり支えてハイ成分&甘めな声の4人と調和しているのかなと思います(曲によって岡田くんが低音組に属することがあるのも面白くてたまりませんね個人的には!)。
ただ、坂イノはすべての曲でエッジが強く聴こえやすいということでもなく、後述する「長岡前めのユニゾン」に該当する楽曲(優しい雰囲気の楽曲が多い)なんかでは他4人と融和して少し後方にいる気がします。以前井ノ原くんがラジオか何かで「V6で歌う時は他の人の声を意識して歌っている(声の重なりや調和を意識している)」みたいなことを言っていた気がするのですが(かなりうろ覚えです。記憶違いだったらすみません)、それってこういうことなのでは、と思います。曲の雰囲気をつかんで、その上でどういったユニゾンにするか考えて自分の歌声を調節しているような、そんな器用さを持ち合わせた2人なのでは、と深読みしています。彼らに夢を見すぎだと言われるかもしれませんが…!
このタイプのユニゾンは多分、過去すべての楽曲で考えると1番多い形だと思います。シングルA面などは結構これ。なので一般的なV6の声イメージはこのパターンを指しているのではないかと思います。昔の曲はもっと極端に坂本くんど真ん中の最前という感じなのかなと。最近でも『COLORS』や『Timeless』、あとは『ROCK YOUR SOUL』なんかもキーは高いけど坂イノが聴こえやすいユニゾン。大人っぽさや男らしさを表現したり、素直にメッセージ性や気持ちを届けたい曲に多い、しっかりまとまった安定感のあるユニゾンのバランス。
◎剛健が前にいる
『太陽と月のこどもたち』の6人ユニゾンは、剛健が結構ハッキリ聴こえて、長岡が度々前に来て、坂イノが低いキーになるとよく聴こえるっていうイメージ。この曲に関しては、全員が優しい声で歌っていることもあり溶け合い方が割り増ししてます。坂長イノ岡が溶けすぎててバランスを聴きとるのが難しい。ただ、ラストサビの「~…僕も生まれた 暖かな手を繋いで…」のキーが上がるこの部分で剛健と長岡が前に来るのでここがわかりやすいかもしれません。この曲は、トニセン(坂本・長野・井ノ原)・カミセン(森田・三宅・岡田)っていう3人ずつのユニゾンも聴けるのがとても楽しくて、トニカミ分けのユニゾンになった時に、六人の時に結構聴こえていた長野・岡田の両名がちょっと見えづらくなるというのも興味深いところです。
多分1番わかりやすいのは『Sexy. Honey. Bunny!』。剛健の声が前に出てきていてハイ成分のエッジが効いたユニゾン。ラストサビがとてもわかりやすい。個人的にこの曲においてはアンリミの3人(坂本・森田・三宅)が聴こえやすくて、長イノ岡(長野・井ノ原・岡田)が音の変動で顔を出すイメージ。
剛健の声ってハイ成分かつエッジが強いだけに、ユニゾンとなると、並列に並べていても突き抜けて聴こえてしまう難しさがあるのかなと思うのですが、「目立つから聴こえないようにしよう」とはならず、特徴的で突き抜ける声を逆手に取ったユニゾンの曲がたくさんあって、チームV6ってとても素敵だなあと思います。ユニゾンだけでなく、楽曲のチョイスや歌割りも然り。
シングルのみでいえば、『Orange』あたりから剛健が前めのユニゾンが増え始めたのかな、という印象です。他にも『ジャスミン』『スピリット』『バリバリBUDDY!』『Sky's The Limit』『never』『KEEP GOING』などがこのバランスかと。遊び心やお茶目さを出したり、ユニゾンに粒立ちや幅広さを出して優しさや爽やかさを表現したり、エッジが効くことで強くメッセージや気持ちを投げかけたりできる、剛健前めのユニゾンです。
◎長岡が前にいる
『足跡』は、長岡がすごく聴こえます。優しくてあったかい曲調に、2人のふんわり包み込むような声が前に出た、空気を含んだぬくもりのあるユニゾン。「また今を生きている しるしって思うんだ 1歩ずつ歩いた この道はいつか」あたりが比較的わかりやすく長岡成分が出てるかなと感じました。2人のすぐうしろで聴こえる剛健の声がまた絶妙なバランス。
みんな大好き『Supernova』は岡田くん(ver.エッジのある甘い声)が結構前面にいるユニゾン。彼の声がよく聴こえると、彼独特の言葉尻の甘めの余韻がしっかり全体に作用して、甘さを含んだ色気、という感じのユニゾンになる。良き。落ちサビのトニカミパートでも長岡の声がそれぞれよく聴こえるバランスになっています。
あと『Remember your love』も比較的この2人と剛健が前にいます。ぶいさんは恐ろしく声の相性がよくて声が融和するので、特にファルセットでのユニゾンから個々を識別するのが結構難しいのですが、この曲のユニゾンはとにかく長野くんの美しいファルセットがとてもよく聴こえます。で、ファルセットから地声に戻る時に岡田くんが見えやすい。2番サビ「胸の中の その姿が」部分に長野くんのファルセットと岡田くんのエッセンスがよくでています。
坂イノを低域、剛健を高域とするなら、岡田くんが低域寄りの中域で長野くんが高域寄りの中域というイメージ。加えて、2人の声が空気を含んだような柔らかさを持った中域なので、まさに高低の緩衝材・つなぎの役割を果たしていて、その結果6人の声が溶け合うようにまとまっているのではないかと感じます。私は『The One』ラストの方の6人ユニゾンを聴いていて、6人のこの音域のばらけ方と融和の素晴らしさを感じました。転調後すぐの「Every day every night」っていう第一声から、まさに音域の層による厚み!という感じがして最高です。よく聴こえるわけではなくても、長岡の柔らかなつなぎ、素晴らしい。そんな2人が前にいるユニゾン、曲数としてまだそんなにたくさんはないのかもしれませんが、滑らかでふんわりとした、包容力のある温かみや、甘い色気を表現するのにとっても適したユニゾンだなあと思います。
◎ザ・並列!
そして、井ノ原さんが私たちにユニゾン分析の貴重なサンプルとして提示してくれた『レッツゴー6匹』。この曲、多分6人で横一列になって歌っているように聴こえることが狙いとしてあるんだと思います。ゆえに、見事に、聴こえ方が横一列と言っていいほどほぼほぼ並列。それを前提として聴いていると本当に面白い。サビのキーになるとよく聴こえてくるのがなんと井ノ原組(井ノ原・森田・三宅)。歌声における分類でこの3人が同じ振り分けになることってそうそうないイメージだったので、意外!「君がため 光が集まる方へ」部分とか。サビの親子組(坂本・長野・岡田)は、3人揃ってめちゃくちゃ溶けてんな!と思いました。岡田くんはやっぱり語尾に彼のエッセンスが出るときがあったのですが、坂長は特に、びっくりするほど区別できなかったです。
あとはコンサートや生放送などでの歌唱は、もしかすると音声さんがその場でバランスを取っていたりするのかもしれませんが、ほぼほぼ並列な状態でユニゾンを聴ける機会だと思います。つまり原曲(CD音源)とは違う配合のユニゾンが聴けて面白い!並列なユニゾンは、なんだか彼らのありのまま!という感じがよく出ている気がしました。
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大きく4パターン、ということでこういった分類をしてみましたが、いかがでしたでしょうか。分類してみたものの、やはり、聴いていて全く同じバランスのユニゾンなんてものはなく、かつこの4パターンどれにも当てはまらない楽曲もたくさんありました。
例えば『大人Guyz』なんて、サビは夕ドロ(長野・井ノ原)が結構聴こえるようにも感じたし、『シュガー・ナイトメア』のユニゾンも桃パスタ(長野・三宅)がよく聴こえるような気もするし…と。正直同じ曲の中でも聴こえ方が揺れ動いているのでこれはこう!と断言はできないものばかり。だからこそ、そういった部分に注意を向けて彼らの楽曲・ユニゾンを聴いてみるのも面白いですよ!と、それが私の伝えたいことです。
新曲『Super Powers』のラストサビ部分を試聴して、題材の爽やかさと曲調の疾走感に見事にマッチした激エモユニゾンに思わず筆をとったという経緯だったのですが、こうして普段考えていたことをひとまずまとめることができ満足です。鵜呑みにせず、こんなことを考える奴もいるのだなと話半分で考えていただけると良いかと思います。
人によって楽曲の楽しみ方も、聴こえ方も違うと思いますが、何はともあれ、ぜひとも今一度、V6のユニゾンに耳を傾けてみてください。もしかすると、なにか新たな発見があるかもしれませんよ!